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そのまま、私は風野さんの胸の中に顔を寄せた。
かっちりとした黒いスーツに、私の涙が滲んでいく・・・。
風野さんは、優しく私の背中をさすってくれた。
「そんなに泣いたら、化粧が崩れるだろ」
「もう崩れてるから、大丈夫・・・」
「何が大丈夫なんだよ。これから、朽木さんに会うんだろうが」
「うん・・・」
そうだった。今日から、私は朽木玲子になるんだった。
今朝、智司さんが婚姻届を提出しに行ったから、私はもう衣浦玲子じゃないんだ。
そう考えると、余計に悲しくなってくる。
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