398人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、「着きましたよ」と、運転手の優しい声が聞こえた。
「もう・・・着いたんですね」
タクシーのミラーを見てみると、私の顔は涙と崩れた化粧でぐちゃぐちゃになっていた。
でも、この方がいいのかもしれない。
こんな姿を、誰も「衣浦玲子」だとは思わないだろう。
「それでは、行きますね」
私は、風野さんの胸から離れた。
風野さんは、切なそうに私の右手を握った。
「今まで・・・ありがとう」
「こちらこそ・・・。風野さんには、迷惑をかけてばかりで・・・」
最初のコメントを投稿しよう!