第序章 回想

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  手術は成功に終わったが、俺の右腕は痛み続けた。 あまりの痛さに、右手は鉛筆を持つことすらできず、小学校、中学校と、左手で生活することを余儀なくされた。 そのお陰で、と言ったらなんだが、右手左手どちらも使える両利きにはなったけど。 それにしても、なぜ父さんがあんなことをしたのかは未だに分からない。 俺はおもむろに右手の傷を擦った。 「すこし疼くな………」 高校に入るころにようやく痛みはひいてきて、右手もやっと思い通りに使えるようになった。 でも、こうやって傷が疼くことがたまにある。 それはまるで…………呪いのように。 何の気なしに母さんにそう言ってみたら、すごく怒られたのを覚えている。 『なんて事をいうの!』 その時の母さんは、俺がいままで見た中で一番怖い母さんだった。 それなのに…それが俺が見た最後の母さんの顔だった。  
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