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《あの土地については後で話ましょう。
勢いで出てきてしまいましたが、このまま向かっていいですか?
……もう着きますが》
一向に納得する様子のないシキにディアスは大きく息を吐きながら話題を変えた。
《……先伸ばしにしても仕方ないからね。
それに私が嫌だと言ってもここまで来たら拒否できないでしょ?》
《はい。私でも流石にここに何度も入れませんからね》
最初から断らせる気のないディアスをシキは呆れて見た。
《じゃあ私は行くけど、ディアスは来るの?》
《勿論です。折角ここまで来たのですから》
《…………ありがとう》
その言葉は屋上の時よりも弱々しく、掠れていた。
《何か言いましたか?
私も人型になるので早く降りて下さい》
ディアスは聞こえなかった振りをしたが、その瞳は心配そうに揺らめいていた。
《わかった》
ディアスの表情に気付いたシキは淡く微笑むと、一見何もない一面の森の中へと飛び降りた。
《さて、行きますか》
ディアスが深呼吸して森へと下降して行くと同時に体は光り縮んでいく。
地面に降り立った時には美しい人に変わっていた。
背中まである真っ直ぐな髪は光の当たった所が淡く金色や銀色に輝き、整った顔には蒼い切れ長の瞳が冷たく光っている。
弛く、線のわからない純白の服を纏ったその姿は見る人によっては天使と呼んだかもしれない。
そんな人間離れした雰囲気を纏っていた。
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