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道などないのに迷わず進んで行くシキがやっと止まったのは、歩き始めてから30分位経過した時のことだった。
《着いた》
《何もあるように見えませんが……》
自分が気付いてないだけで目印でもあるのだろうかとディアスがその場所を見つめていると、シキは苦笑した。
《何もないからね。昔はあそこに小さな祠を入り口として置いてたんだけど朽ちてしまったみたいだし》
シキが指差す先を見れば、確かに何かの残骸があるように見えなくもない。
《祠が入り口ってことは……ここに何かある訳ではなく別の場所に繋がっているという事ですか?》
何故わかったのか?という質問ははぐらかされたので諦め、違う質問をするとシキは軽く頷いた。
《うん、まぁ見てて?》
シキは残骸がある所まで足を進めると、そこで一回深呼吸をし目の前へ手を突き出す。
ディアスは何をしているのかどそれを凝視し、ある違和感に気付いた。
《手首から先が……ない》
思わず出てしまった声にシキは気付いているだろうに全く反応しない。
突き出した右腕を少し上下に振ると左手まで突き出した。
それはとても奇妙な光景だった。
何もないはずの場所にあたかも巨大な柔らかい壁があるかのようにシキが開けようとしている。
そして、それに合わせて周りの景色が僅かに歪んでいた。
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