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それからはあっという間だった。
空間の裂目が目に見える位大きくなると、その異質さも更に際立つ。
裂目の奥は──
何もなかった。
確かに風景は“それ”によって切り裂かれているのに隙間には闇も光もない。
それは闇などとは比べものにならない程の恐怖を呼び起こすものだった。
動くことも、目を反らすことも適わない。
ディアスが正気を保っているのはシキが視界の中にいるから。
ただそれだけだった。
《そ……れは……?》
ようやく絞り出した声でシキに問う。
その吐息のような言葉を拾ったシキは空間を広げるのを止めて振り返った。
《世界と世界の狭間。本当は開けたくなんかなかったけど……あの学園で見た空間の亀裂がここのと同じものだったから何かわかるかと思って》
《こん…なのが……他にも?》
《小さい亀裂だし、一応ふさいだから大丈夫だよ。
でも開いた原因は調べないと。
……ディアスは待ってる?》
明らかにつらそうなディアスにシキが言うと、顔色は悪いが縦長の瞳孔を開き、はっきりと言った。
《いきます。それはあの男とも関係しているのでしょう?》
もう言葉が切れることもなく、裂目を親の敵かのように睨むディアスの姿がそこにはあった。
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