第九章

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別世界にある、ひっそりと隠れたとある村。 そこの村長の家系は不思議な力を使えた。 その力は神がこの地に降り立った時、御守りする為にあると。 そんなしきたりが遥か昔からあった。 ある日、歴代でも能力が高いと言われている村長の息子が家の前に赤子が落ちているのを発見した。 その赤子は普通とはかけ離れたたいそう美しい顔立ちに、神の瞳を宿していた。 村長と息子を凌ぐ程の力を有し、不治の病に侵されていた村長の妻を笑顔ひとつで癒す。 神の子供──神子だと、村は歓喜に包まれた。 神子を御守りする大役は息子に一任された。 神子を御守りする役目に子供では──と息子は7歳にして大人になる。 名をソウワ。 住まう為の家を与えられ、地位を与えられた。 ──村に念願の神守が生まれた瞬間であった。 神子はソウワの元、すくすくと美しく成長した。 その姿を見た者はあまりの美しさに一週間つかいものにならなかったという。 そのため、神子は一歩も外に出ることはなかった。 神子の告げた神託は全てソウワが村人へと伝えた。 どこの川が一番魚をとれるか、飢饉に備えよ、疫病がはやらぬよう気をつけよ。 日常に関わることばかりを伝えていた神子が、ある日一風変わった言を発した。 曰く“器が持たぬ。力の全てをもうひとつの器へ”と。
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