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実は孤児院に入った以前のことを全く覚えていないレイ。
これは大きな手掛かりなのでは?とも考えたが、自分がそんな有名な血筋のところの者のはずがない、と思いを断ち切るように頭を振った。
「レイ、どうしたの?大丈夫?」
明らかにおかしなレイの様子にルナが心配そうに言う。
「何でもない。それより今はシキのことでしょ?」
ルナにというよりは自分に言い聞かせるように言ったレイはユーリの方を向いた。
「ユーリ、そのソウワって奴この国の王の祖先だよね?
エ……王様の方がよく知ってるかな?」
シキがソウワの名前を出したのは一度だけ。
王様──エドの顔を見た時。
数年前の話ではあるがシキの取り乱しようは異常であり、レイははっきりと覚えていた。
シキの様子からソウワがシキに何か相当悪いことをしたのは明白であり、ソウワに対するレイの心象は最悪である。
吐き捨てるように言ってしまったのは当然と言えば当然だった。
……事情を知る者にとっては、だが。
「ちょっと、その言い方はないでしょ!
この国を造り上げた人に対して失礼よ!」
「そうだぞ!」
レイに対し怒鳴りつけたサラ、言うことがなくなってしまったのか相槌を強く打ち、拳を握るエンド。
だが、憤り立ち上がったのはこの二人だけで、同じ大貴族であるはずのルナとユーリは何の反応も示さなかった。
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