第九章

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「ちょっと、ルナにユーリ。何で怒らないの? カイは遠いとこから来たから仕方ないとして、侮辱されたのも同じなのよ!?」 「そうだぞ!」 「あんたはうるさい」 またもや相槌を打っただけのエンドを一蹴し、怒りの矛先は主にルナに向かう。 同じ地位にいて、国を支える立場の家で育った者同士。 怒らないどころか、侮辱した本人であるレイを心配そうにみているルナにサラは裏切られたような気持ちになった。 「……別にあれ位、いいんじゃないかな? 昔の人よりも今、生きている人を優先するべきだと思う」 育てられた環境の違いもあるのだろう。 “国を第一に考え、国の為に行動しろ” と育てられたサラと “自分の思うままに行動しろ。国よりも自分の意思を大切に” と、大貴族にあるまじき考えで育てられたルナ。 ルナにとってみれば、明らかに様子のおかしなレイに対して言い方が悪いと言うだけで怒り狂うサラが全く理解出来ない。 戸惑いと責める気持ちの入り交じったルナの視線を感じとり、サラはギュッと拳を握る。 知り合ってから10年。 国を悪くいうような言葉を初めて一緒に聞いたことで知った思考の違いは余りに大きく、深いものだった。
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