新学期

11/27
前へ
/861ページ
次へ
多目的ホールはオープンスペースでかなり広い。 主に学年集会などに利用される。 全6クラスある2年生が全員集まると、さすがにパンパンだ。 あたしは椅子から伸び上がるようにして、先生の姿を探した。 先生たちは前方の端に固まっていて、後ろの方にいるあたしからは少し遠い。 だけど…… いたー! あたしの目には、石田先生の姿がすぐに飛び込んできた。 集まっている先生たちから少し離れて、腕組みをして立っている。 こっち見ないかな。 てか、こっち見ろ。 こっち見ろ。 こっち見ろ。 心の中で何度も唱えていると、それが通じたのか、不意に顔を上げた先生と目が合う。 ――わわ。 ほんとにこっち見た! 嬉しくなって、あたしは胸の前で小さく手を振った。 ダーリン、おはよー、なんちゃって。 へへへ。 「……」 だけど先生は、眉一つ動かすことなく、プイッと視線をあたしから逸らした。 ガーン! あたしの頭の中で、またもやショック音が鳴り響いた。
/861ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16478人が本棚に入れています
本棚に追加