いざ!ドイツ

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見慣れぬベルリンの街の大きな交差点をバックに、先生はフッと頬を緩めた。 「素直じゃん。いい子」 そう言って、先生はあたしの頭をクシャクシャと撫でた。 ここは、ポツダム広場という有名な場所らしいけれど、その景色よりも先生だけで、あたしの視界はいっぱいになる。 「……じゃあ、そろそろ帰ろうか」 あたしの頭から手を離して腕時計に目を落とした先生は、そう呟いた。 「はい」 正直、まだまだ一緒にいたかったけれど、気持ちを切り替えると言った手前、頷くしかなかった。 そんなあたしの気持ちを見透かしているかのように、先生は片方の口角を上げて笑っている。 ちょっと悔しいな、なんて思いつつ、ホテルへ帰る為に先生に背を向けて一歩足を踏み出した。 すると、後ろから先生の声。 「……って、どこ行くんだよ。ホテルは逆」 「え」 うそ、と振り返るよりも早く、グイッとあたしの手が後ろへ引っ張られた。
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