いざ!ドイツ

13/14
16478人が本棚に入れています
本棚に追加
/861ページ
「お前、方向音痴なの?いくら初めて来た場所だからって、真逆って」 「だって、同じような建物ばっかりなんですもん。どっちから来たのかなんて、分かんなくなっちゃいますよ」 「いや、ちょっと考えれば分かるだろ」 「分かりません」 ムウ、と頬を膨らませて先生に反論する。 先生の呆れた物言いに抗議の視線を向ける。 ……けれど、油断するとすぐにその頬は緩んでしまう。 ――だって。 あたしは視線を、自分の手元に落とした。 手。 あたしの手。 先程、正反対の方向に歩き出したあたしを引っ張った先生は、そのままその手を握ったまま歩き出したのだ。 手、繋いでる。 へへ、と心の中でにやける。 これは、先生、気づいてないのかな? いや、先生に限って、そんな間抜けなことする? じゃあ、気づいていて、ほどかない? ――なんてアメとムチ。 相馬君、吉岡君、ごめんなさい。 夜中でも明るい異国の街中で、1人にやけながら歩いているあたしを許して。 明日からは、絶対に、気を引き締めて頑張るから。
/861ページ

最初のコメントを投稿しよう!