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考えていたのは土方の最期のこと。
やはり未来を変えてしまうのが、手っ取り早く確実だと思っていた。
だけど私にそんな力があるだろうか?
この時代で生きてきた五年間に、私は何を変えられただろう。
何の確証もないまま、土方の最期に一発勝負なんて出来なかった。
未来がわからなくなると困るため、どちらにせよ今は手が出せない。
鉄之助には黙っていたが、野村は撤退に間に合わず死亡するのだ。
相馬の怪我と野村の命を助けるだけ。
歴史までは変わらないはず。
とにかく私は、未来を変える力があるのかどうかを確かめたかった。
もしそれが可能であるなら、土方が死ぬ数日前に行動を起こそう。
そしてそれが不可能なら、私はきっと身代わりになることを選ぶだろう。
「結羽さん、何考えてるの?」
「ううん……相馬さんのことお願いね」
縁側から夕焼け空を見上げた時、土方が部屋に戻ってきた。
激しい足音とともに、大きな怒鳴り声が背中に突き刺さる。
「さっきからどういうつもりだ!? 余計な口出しするなって言っただろうが!」
「どうしてそんなに怒るの?」
「お前、自分がどうなったのか忘れちまったのかよ!?」
私にとっての最大の敵は、土方なのだと身に沁みて思った。
未来を変えようとする私と、それを何としても避けようとする土方。
一緒に居れなくなるなら、記憶なんて失いたいくらいだよ。
夕日を背に振り返った途端、土方は呆れてため息をついた。
「顔を洗って来い。怒る気も失せる」
「土方さんが傍にいてくれたら、私の記憶には何の問題もないんだよ?」
「それで済むのか? 目の前から突然消えてみろ……お前だけじゃねぇ、俺はきっとその日から何も見えなくなる」
茜色に染まった瞳を見つめ返す。
なぜか口論には発展せず、土方は口元に笑みさえ浮かべていた。
「私は未来を知ってる。このままで私に何を信じろって言うの?」
「総司は生きてる」
「多分でしょ、連絡もない」
素っ気なく言い捨てると、土方の横を通り過ぎて足を止めた。
鉄之助は立ち入ることも出来ず、背中合わせの二人を見つめていた。
「土方さんは蟠竜丸に乗るんでしょ?」
「……何故だ?」
「気を付けてって言おうとしただけ」
畳に伸びた固い影を踏みつけ、思わず背中越しに嘘を言った。
そして土方もまた、柔らかな西日に目を細め平然と嘘で答えた。
「恐らくそうなるだろうな」
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