第二十五章

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そんなこと私にもわからない。 それに昨日から、五月五日という日付けが頭から離れなかった。 思い違いなんて誰にでもあるし、亜希はよく早合点して失敗する。 だけどそれはあくまで、新撰組に無関係であればの話だ。 亜希……どうしちゃったの? 今日はまだ四月十五日だよ。 返ってこない声が苛立たしかった。 同じように鉄之助の肩に腕を伸ばし、心配げな横顔を見上げる。 「写真の一枚くらいさ、あげればいいのにって思ったよ……死んだら二度と会えないんだ」 「……土方さん、怒ってたよね?」 「怒るどころか俺は相手にもされてない。戦死の恐れを仄めかした俺に、日々精進するって言ったんだよ? はぁ……何かさ、副長が怖いよ」 鉄之助の話を聞きながらも、いつ話を切り出そうかと考えていた。 それは私が昨日、一睡も出来なかった理由でもある。 「いつも俺は死なないって……」 「そうじゃなくて死ぬ気がしないんだよ。今までは結羽さんの様子を見て、副長の最期を計ってたけど……ところでさ、日野で何が出来るの?」 これまでのことを思うと、大量の涙がとめどなく溢れ出した。 組まれていた腕をすり抜け、正面から鉄之助を強く抱き締める。 「いつも味方でいでぐれで……うぇっ、鉄ぐんが……うっ、ううぅっ……」 「な゛っ!? 何だよ、俺を殺す気かよ!? こんなとこ副長に見られ……えっ、何?」 しゃくり上げながら口を開く。 張り付いた体を引き離し、鉄之助は私の唇に耳を近づけた。 「だから私……船には乗らない」 「ちょっ、何言ってんの? 副長、見送りに来るって言ってただろ!」 言ってるそばから、土方と相馬がこちらに向かって歩いてくる。 説明もないまま早口で伝えた。 「相馬さんと二人だけで話がしたいの! だから土方さんの気を引いてね、お願い」 「……はぁっ!?」 素っ頓狂な声を上げ、鉄之助は呆れたように天を仰いだ。 土方は悪戯に鞄を引っ張ると、硬直した体を両腕に抱き止めた。 「遅かったじゃねぇか。どうした、眠れなかったのか?」 「ううん、少し寝坊しただけ」
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