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帯に垂れた根付を外し、じっくりと梅の花を覗き込む。
土方と離れている時も、肌身離さず宝のように持っていた根付。
お守りの口をそっと開き、ダイヤの存在を確認した。
これを換金すれば物凄い金額になる。
だけど何より凄いのは、これを私にくれたかよだと思った。
折り畳んだ手紙の中に、お守りの付いた根付を挟み込む。
この手紙には……
私が死んだ時のことが書いてある。
かよのくれたお守りの中には、沢山の夢が詰まっていたこと。
そのうちの一つだけでも、どうか願いを叶えて欲しいということ。
金剛石を換金した一部を、土方に根付と一緒に渡して欲しいと書いた。
もし二人ともこの世にいなければ、全てを沖田に託することも。
私に出来ることは、かよにダイヤを返して土方に金を残すことだけ。
泣きそうなほどに情けなかった。
ちらつく土方の面影が、寝ても覚めても頭から離れない。
近くにいるのに会えず、残された時間に気が狂いそうだった。
土方が二股から帰陣したのは昨日。
歴史通りなら五稜郭に戻り、榎本や松平と会議を行ったはず。
待ち伏せをして、遠くから見るだけなら……
ストーカー思考に及んだ時、佐野が部屋にやって来た。
「手が空いてたらでいいんだけど……昨日の握り飯、今日も頼めないかな? 凄く美味かったみたいでね」
「……普通のですけど?」
昨日は別に頼まれたわけではない。
佐野から女中を探していると聞き、代わりに飯を握ったのだ。
「私で良ければ……夜食ですよね? 五分くらいで出来ますけど」
「いや、晩飯だよ」
修行中のお坊さんかな?
佐野と勝手場へ移動すると、刻んだ沢庵を飯で包み込んだ。
皿に二切れの沢庵を添え、さっと後片づけを始める。
すると僅か数分後、何かを思い出したように佐野が戻ってきた。
「少しいいかな?」
「はい、何でしょう?」
「握り飯を作った人に挨拶がしたいと言われてね……少し来てもらえる?」
絶対に嫌だと心の中で即答する。
だけど世話になっている以上、断ることが出来なかった。
挨拶って……おにぎりですけど?
廊下へ正座をすると同時に、佐野がすっと障子戸を開けた。
あれっ……食べてない……
目に飛び込んだのは、皿の上で真っ二つに割れた握り飯。
「あ、あの……何かお気に召さな……」
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