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突如、沈黙が訪れる。
無視をしたのではなく、頭の中が忙しくて聞こえなかったのだ。
……私は何をしているんだろう。
それはいつも突発的で、安眠を得るための緊急課題だった。
初めて向けられた冷たい視線は、今でも脳裏に焼きついている。
別にショックだったわけじゃない。
想像していた通りの男だったと、結羽を羨ましく思ったほどだった。
それほどに私は、沖田という男に心酔していたのだろう。
想い描いた男に惚れ込み、親友を巻き込んで時を逸脱した。
そして別の男の子を身ごもり、フラフラと現代へ戻ってきた私。
だからさ……
私は一体何をしているの?
朝まであと何時間あるんだろう。
人差し指に巻きつけた髪を、無意識に強く下へ引っ張った。
「負けず嫌いなのは分かるけど、ここまで強情だとは思わなかったよ。そんな風にいくら焦っても、時間の経つ速度は変わらないんだよ」
「誰の話をしてるの?」
苛立った口調で窓の向こうに呟いた。
悠祐はそれを聞き流し、窓に反射した顔に淡々と問いかける。
「最後に月と話したのはいつ? もう随分前で思い出せないんじゃないの? 話しかけるどころか今は逃げることに必死だからね」
「私の何が分かるの……たった数ヶ月で何もかも分かったような振りしないで!」
「その数ヶ月の間に、どれだけお前のこと見てきたと思ってんだよ!!」
車内の時計に目を向けた私に、悠祐はとうとう怒鳴り声を上げた。
さっと腕を振り払われ、巻きつけた髪が指の間からすり抜ける。
なぜか悔しくて涙が込み上げた。
突然の怒りに腹を立てると、泣く代わりに悠祐を睨みつけた。
「こっち見ろよ……そいつのこと本当に大切だと思ってるなら、早く読ん……」
「放してよ、もう!」
「受け入れてやれって言ってんだよ! それが出来ないからお前はいつまでも焦ってんだろ!」
私は紛れもなく焦っていた。
辺りはひっそりと静まり返り、街はとっくに寝息をたてている。
押し寄せた罪悪感と後悔の念は、どの時間帯よりも過酷だった。
どんなに雲が月を覆い隠そうが、私はどこにも逃げられなかった。
不意にフロントガラスが雨粒を弾く。
悠祐は膝に目を落とすと、いきなり島田箱を払い落とした。
「な……何すんのよ、バカ!!」
「バカはお前なんだよ! 考えろよ……150年も前から恨んでる奴に、誰がこんな日記残すんだよ」
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