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「言っただろ」
夢の中で。
バクバクと心臓が五月蝿い。
顔が熱い。
夢なら覚めろ。
何度も何度も頭のなかで叫んだ。
「俺も、お前のこと好きだよ」
見慣れた裕二の、見たことのない笑顔。
聞いたことのない声。
もしかしたら、これって
「ゆ、め?」
「夢じゃ嫌だって言ったのは、お前だろ」
優しく頬を撫でる手。
ピリピリと電気が走ったような感覚に襲われる。
「お前が、そう望んだんだから」
もうダメだ。
耳に落ちる、柔らかい声。
全部飲み込みそうな、真っ黒な目。
裕二の顔が、あと10センチの所まで近づいて。
俺は目を閉じた。
END
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