非現実のような

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シンと静まり返る教室には、俺とあいつ二人。 目の前で、微笑む顔が、いつもより男っぽく見えるのは気のせいだろうか。 「千尋」 耳に落ちる、高くもなく低くもない、柔らかい声。 「俺、お前のこと好き」 全部飲み込みそうな、真っ黒な目。 「お・・・、何言ってだよ」 うっかり、雰囲気と裕二の表情に、「俺も」と言ってしまいそうになった。 こんなおかしな状況がいけないのかも知れない。 目の端っこで時計を見る。 ホームルームまで、あと30分。 誰もまだ登校してこない。 広い教室には、俺と小学校からの幼なじみ二人きり。 いつもなら聞こえる朝練の声さえ聞こえてこない。 「キスしたい、抱き締めたい、Hして、何度もお前の中に入ったりしたい」 呪文のように囁きながら、ジリジリと距離を詰める。
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