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「困らせたいわけじゃなかったんだよ」
さっきまで、余裕のあった目に一瞬にして寂しげな光がやどる。
「いいよ。全部、冗談にしてやる」
そして、ゆっくり俺から離れていこうとする。
瞬間、チクリと痛む胸。
『嫌だ』
『行かないで』
なんて、言えるはずもない。
だって、男同士なんだ。
素直に受け入れていいものじゃない。
あっちゃだめなんだ。
「お前が望むなら、これは全部夢だよ」
目の前でまた、笑う。
「俺の言った言葉も、俺の気持ちも。全部、お前が見てる夢」
伸ばされた手が、優しく頬を撫でるのを、ただジッと受け止める。
「こうして、俺がお前に触れてることも、全部」
ね、と首を傾けて、俺の大好きな笑顔を見せる。
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