非現実のような

4/7
前へ
/7ページ
次へ
「困らせたいわけじゃなかったんだよ」 さっきまで、余裕のあった目に一瞬にして寂しげな光がやどる。 「いいよ。全部、冗談にしてやる」 そして、ゆっくり俺から離れていこうとする。 瞬間、チクリと痛む胸。 『嫌だ』 『行かないで』 なんて、言えるはずもない。 だって、男同士なんだ。 素直に受け入れていいものじゃない。 あっちゃだめなんだ。 「お前が望むなら、これは全部夢だよ」 目の前でまた、笑う。 「俺の言った言葉も、俺の気持ちも。全部、お前が見てる夢」 伸ばされた手が、優しく頬を撫でるのを、ただジッと受け止める。 「こうして、俺がお前に触れてることも、全部」 ね、と首を傾けて、俺の大好きな笑顔を見せる。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加