序章

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 そして、彼の日常生活は堕落“だらく”の一言に尽きる。 起床、『昼食』、パソコンを触る、『夜食』、風呂、パソコンを触る、寝る。 一文一行で事足りる生活のローテーションには第三者から見れば呆れすら感じる。  洗濯はする事はするが、畳むのが面倒なのでそのまま。 お陰で、彼の着る服は全てがしわくちゃで貧相に見える。 外出する事など滅多になく、流石に食料を買いに外出する時は洗濯した服を着ているが、ファッションセンスは最早皆無だ。  そんなダメ人間・大が何の用もなく外出しているのは珍百景そのもの。 特に外出の理由はなく、「ただなんとなく」の一言に尽きる。 もう一度大きな欠伸“あくび”を一つし、雲一つもない晴天の青空を見上げ、大はプランを立てていた。 「何すっかねぇ~。コンビニで立ち読みもいいけど、なーんか口恋しくなるだろうしなぁ。……血迷って甘い物とか買いそうだ」  大は辛党である。 甘い物が食べれないのではないが、イチゴのショートケーキ一切れ食べれれば十分というくらいだ。 自ら進んでそんな物を買ってしまうほど、今はテンションが高いのだろうか。  一時のノリというものは実に怖いものだ。  何はともあれ、このまま玄関に突っ立っていては寒いだけ。 何処に行くかは未だにハッキリしていないが、いざとなれば親友が両親の手伝いをしている八百屋に少し邪魔するのも悪くない。 邪魔するだけではなく、少し手伝ってあげるのもまたいいかもしれない。  そんな珍しい事を、まじまじとアスファルトのひび割れからひょっこりと顔を出す雑草を見ながらそう思った。 「ガラにもねーこと思いつくよなぁ、最近」と独り言を漏らし、今度はご近所の家の傷が目立つコンクリートの塀“へい”を眺める。 これは大の勝手な妄想だが、此処が都会ならばこうも傷が目立つ塀やアスファルトのひび割れが異界に見えるだろう。  ふと、そんな田舎者丸出しな妄想をしていると、何処からか視線を感じた。 小首を傾げ、辺りを見回しても目に映るのは寂“さび”れた道路と立派とは言い難いボロい自宅とご近所さんの家。  気のせいだろうと見切りをつけるが、やはり何処からか視線を感じる。 いや、今度は視線だけではなく気配すら感じる。 ――異質だ。
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