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水無月…
梅雨の時季で、街には雨が降り続いていて…傘をさし街行く人は、溜め息をつき、つられて人々の間では憂鬱の匂いがした。
「ふっざけんな」
夕焼けでオレンジに染められた教室で、一人の男子生徒の叫び声に似た声が荒々しく響いた。
机の上には教科書やら筆箱の中身が散らかっていて、何故か足元には水滴がこぼれている。
机の中を荒らされたらしい。
誰だよ…と心の中で悪態を吐きながら、机の上にある教科書類を机の中にしまっていく。
無機質な時計の音が、教室の静けさを表していた。
今を色で表すなら灰色がピッタリだと思った。
音も、景色も、人も、世界ですら灰色で、男子生徒には詰まらなく映っていた。
つまらない…。
何度心の中でその言葉を吐いたことだろうか。
溜め息をついた後、男子生徒は鞄をもち教室を後にした。
今思えばこれが、この物語の始まりだったのかもしれない。
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