黙示録―開演―

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汚れた空を駆ける影が一つ。 生温い風を切り捨てて大きな漆黒の翼をはばたかせる。 鳥ではない。 鳥にしては大きすぎる。 何より、それほどに大きな鳥など愚かな人間が滅ぼしてしまった。 では何か。 それは人型だ。翼を生やした人。 宗教画に描かれた天使のような。 その髪は焔と呼ぶには鮮やかな――鮮血と呼ぶが妥当な――紅髪。 意図されて作られた彫刻のような感情の無い、けれど美しいかんばせ。 瞳は闇の一切を切り裂く紫電の瞳。 顔だけならば性別を問えない完成されたそれは、ある場所を目指していた。 そこはつい先程まで凄絶な光を放っていた箇所。 強過ぎた力が周りを消滅させた。 過去に犯した人間の兵器のように、生を持っていた全てを一瞬にして死の川原へと追いやった。 その光も終息を迎えんと細い柱となっていた。 その中心地。この光の主の下へと紫電の瞳を持つそれは一心不乱に向かっていた。 それの翼は遅くはない。 しかし、光に飲まれぬ場所からその中心地へと向かうには距離がある。 それほどに光の力は強い。 天を裂き、地の底に届くほどに。
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