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「…ぐっアラレ様ぁあ!!」
時雨家の正式な主は全員で七人。その他に主候補が三人いた。その主候補には暁と今は亡きアラレもいたのだった。
時雨家最後の後継者と呼ばれる暁は主になるべき立場を弁えず主を持ってしまい時雨家からの鋭い目線を注がれ生きてきた。
それに対し努力により主候補へと上り詰めたアラレの才能に多くの者が集まり信頼した。
「アラレ信者は今日も健気だねぇ~」
時雨家の中庭にアラレの墓はある。そこに毎日数多くのアラレ信者が集い泣き崩れる。
その様子を瓦の屋根から眺めるこの男――時雨雫。時雨家の正式な主の一人であった。
「雫様ー!!ここにおられたのか。大変ですよ!!」
「何だ騒がしいなぁ。」
「人神がっ人神が天空から降りられた!!」
「ふ、我等をわざわざ侮辱しに来たのか?飽きない奴め。私が行こう!各主に伝達を」
面白いことが起こりそうだ!存分に騒げ、人神よ。私を楽しませておくれ
雫は楽しそうに鼻歌を歌いながら人神が現れたという正竜の出口まで向かう。
その途中、数人の家来が雫の側に寄ってきては耳打ちする。
「雫様、他の主たちが皆…警戒網を張るとおっしゃっているようです。雫様は張らなくていいのですか?」
「案ずるな、玉座は近い。それに所詮は人がなる神だ。人ごときに警戒網を張る必要はない…兄弟たちもアラレがやられて緊張しているのだろう。散れ」
家来は主の指示に従い雫の側から離れた。目的地、正竜の出口は目の前だ。
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