出陣

4/30
前へ
/559ページ
次へ
「…粗探しとな、私は遠慮しとく」 『遠慮は無用。直ぐに済む』 ふわっと温かい風が吹く。前髪で隠された額にある時雨の紋章が顔を見せた時、雫の悪事は暴かれる。 「…くっ体が動かぬ」 逸らしたい逃げたい―――そんな感情ばかりが体中を巡る。雫の悪事を人通り見た人神は笑って額を叩く。 『服役いちね~ん』 「一年!?今回はまだ軽い方だ。一年も服役してられない、時雨家だぞ!?」 『神に人のルールは通じません。嫌なら今後近寄らないことだ』 そこで初めて警戒網を張らなかったことを後悔した。あまり近付きすぎるのはよくないことだと知る。 「服役中は力が半減だったか…真の主がまだ決まらないことを祈ろう。」 『一年後にそれは解ける。神の印は命も守るから頼りにしていい』 「誰が頼るのだ…失礼な話だな」 『それでは余は行く。帰って来たらまた粗探しの続きをしようではないか』 「早う行け、このいんちき神が」 下界へ行き暁に会って何をするのか。雫はあえて聞かずに目を閉じた。 人神が完全にいなくなったことを確認すると重い瞼を上げる。 「神になりそこねた人か人になりそこねた神か。」 力は神と何ら変わらない。だが、人の部分で動ける範囲は普通の神よりかは大きいだろう。  
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!

501人が本棚に入れています
本棚に追加