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「…粗探しとな、私は遠慮しとく」
『遠慮は無用。直ぐに済む』
ふわっと温かい風が吹く。前髪で隠された額にある時雨の紋章が顔を見せた時、雫の悪事は暴かれる。
「…くっ体が動かぬ」
逸らしたい逃げたい―――そんな感情ばかりが体中を巡る。雫の悪事を人通り見た人神は笑って額を叩く。
『服役いちね~ん』
「一年!?今回はまだ軽い方だ。一年も服役してられない、時雨家だぞ!?」
『神に人のルールは通じません。嫌なら今後近寄らないことだ』
そこで初めて警戒網を張らなかったことを後悔した。あまり近付きすぎるのはよくないことだと知る。
「服役中は力が半減だったか…真の主がまだ決まらないことを祈ろう。」
『一年後にそれは解ける。神の印は命も守るから頼りにしていい』
「誰が頼るのだ…失礼な話だな」
『それでは余は行く。帰って来たらまた粗探しの続きをしようではないか』
「早う行け、このいんちき神が」
下界へ行き暁に会って何をするのか。雫はあえて聞かずに目を閉じた。
人神が完全にいなくなったことを確認すると重い瞼を上げる。
「神になりそこねた人か人になりそこねた神か。」
力は神と何ら変わらない。だが、人の部分で動ける範囲は普通の神よりかは大きいだろう。
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