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ここは新しく建てられた多目的校舎から、教室のある普通校舎への連絡通路。
清々しく朝の風景に見とれていると、聞きたくもないノイズが耳から不法侵入してきた。
不快な音波を発したのは、白髪混じりにブカブカの学生服に身を包んだ男だった。
名前など知りはしない。
「ああ、あんたはこれからか」
無視してもよかったのだが、気分がよいので相手になってやる。
「毎日毎日、精が出ますなぁ」
なんなんだ、コイツは。外見も老けて醜いが、中身の方も汚らわしい。
とても僕と同じ中学生とは思えない。
「ふん」
ハナからそうすればよかった。
僕は応えず、鼻を鳴らして立ち去った。
出しているのは排泄物であって、精など出していない。
下郎めが、侮るな。
「ふへへへ」
嫌らしい含み笑いを残して奴は多目的校舎へと向かう。
授業中に便所に行くのは、非常に心地よい事なのだが、いつも奴と顔を合わせる事だけが汚点だといえる。
奴も腹が弱いのだろう。いかにもそんな顔をしている。
だが、あの顔。どこか別の形で見たことがあるような気がするのだが……、思い出せない。
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