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「おい、スゲエぞ」
転げるように教室に闖入してきた生徒は、開口一番大音声でそう言った。
15分休憩の教室内は一時騒然として、彼の二の句を待った。
「多目的校舎の便所にエロ本が落ちてたぞ」
男子生徒のみが色めきたち、女生徒は白い目でそれを忘却してしまったかのようにおしゃべりに戻って行く。
「センコーが犯人探ししてやがるってよ」
教室に駆け込んで来た生徒を中心に、彼らは魔女狩りでもするようにあーだこーだ、あいつだ、こいつだと犯人探しの議論を始める。
待て、多目的校舎だと?
そこは僕の安住の地じゃあないのか?
いったい誰がそんな汚らわしいマネをしたんだ?
答えは明白だ。
奴に違いない。
あ名も知らぬ老けた野郎だ。
あいつしかいない。
「おい、そういや、神山。お前さっきの授業中、あっちの方に糞しに行ってなかったか?」
は?
まさか、僕を疑うのか?
「そういやいつも多目的校舎に行ってるよな」
「おいおい、ふざけんなよ。このイケメンの僕がエロ本なんかに用があるとでも……」
ダメだ、こいつらの中ではもう、僕が犯人確定になっている。
目を見れば分かる。まるっきり人を信じる気のない眼だ。
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