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彼らの発言はもう予想ができる。
僕は後をも見ずに教室を飛び出した。
校舎内を駆け回って、奴を探す。
どこだ?
大便に関する悪態ならば、甘んじて受けよう。それは事実なのだから。
しかし、神聖なるトイレで自慰行為をしていたなどという濡れ衣は断じて着れない。
一刻も早く冤罪を晴らさなければ。
「あ、神山。ちょっと聞きたいことがある。職員室に来……、おい、待てっ」
教師の声も振り切って逃げ出した。
教師は教師を呼び。生徒も面白がって追って来た。
いつしか、学校中から追われる身となってしまった。
大勢の追手を従えて疾駆する僕は、ようやく職員用トイレに入るところだった奴を捕獲した。
「な、な、何すんだ、げへ」
首元を締め上げると、相変わらず不快な音声を響かせる。
「みんな、こいつです。こいつが多目的校舎にエロ本を持ち込んだ男です」
誰も何も言わない。
息を切らして犯人検挙した僕に喝采はおろか、労いのひとつもくれない。
変わりに降ってきたのはこんなセリフだった。
「教頭。なぜ学生服など着ておられるのですか?」
一人の教師が、僕の下敷きになっているヒキガエルのような男に向かってそう言った。
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