常識の世界にある当たり前という壁

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目の前から優しげな声。いつの間にかできていたもう一つの影。 アリス?の時の様に頬に手が伸びてくるが、その手は私の頬をつまむことなく、涙をすくってくれた。 『屋上に銀髪の男がいル!』 (………あ) 狂の言葉を思い出し、期待と不安がこみあげるなか、恐る恐る顔をあげる。 すると目の前にいたのは銀髪の美しい少年。 輝く銀髪は赤い満月の光にも染まらず、目は黄金の光をもつ。 一見女性かと思うほどの整った顔立ちを、肩につくかつかないかの少し長めの髪の毛がよりいっそうそれを引き立てていた。 「あ、あの…人形に銀髪の男がいると聞いて…ここに」 「ああ、狂ですね。はい、確かに僕が銀髪の男です」 笑顔で差し伸べられた手。その手を掴めば、銀髪の男は自然に私を立たせてくれた。 「大丈夫ですか?」 「あ、はい。大丈夫…です」 真紅のリボンに、床につきそうなまでに長い黒いロングコート。いや、灰色? (身なりの良い普通の人に見えるけど…)
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