54 ただいま

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翌朝,目を覚ました三津の視界には桂の綺麗な寝顔があった。 三津は静かに身を起こし,状況を確認した。 『……はみ出てる。』 桂は掛け布団のほとんどを三津の為に使い,身を縮めて眠っていた。三津はそれを桂にかけ直してあげてから着替えを持って部屋を出た。 『九一さん一人で布団使ってたな。あれは二人で話し合ってそうなったんやろか。 どっちにしても三人であれは狭すぎるかぁ……。』 何かいい方法を考えなければと思いながら三津は朝餉の仕度に取り掛かった。 朝餉を作り終えて居間に運んでいるところへ二人が起きて来た。 「おはよう。手伝おうと思っとったのに起きれんかった。」 入江はまだ欠伸をしながら目を擦り,相当眠そうだった。 「昨日色々してもらいましたから。先に顔洗って来て下さい。冷たい水で目も覚めますよ。」 「それならおはようの口づけの方がすっきり目が覚めるんやけど?」 あっと言う間に距離を詰めて三津の肩を抱くように密着した入江にゴンッと衝撃が走った。 「これで目も覚めたろう? おはよう三津,何でも手伝うからしてほしい事があれば九一に遠慮せず言いなさい。」 「あ……はい……。」 桂の満面の作り笑顔に三津はそれしか言えなかった。両手で頭頂部を抑える入江が涙目で,相当な衝撃だったんだろうなと可哀想に思いながら横目で見た。 そして手伝うのは入江で桂ではないのかと気になったがそこには触れなかった。 「と……とりあえず食べましょうか……。」 三人で朝餉を前に今日の予定を確認し合った。 「私らは功助さんとおトキさんらに会いに行って後は町をふらふらしてます。」 入江がそれだけだと伝えた所で三津は恐る恐る口を挟んだ。 「そこなんですけど……おじちゃんとおばちゃんは私は小五郎さんの妻って分かってますよね?九一さんの事はどう説明すれば?」 「お二人にも包み隠さず伝えてるよ。ずっと三津を見て来たお二人だ。嘘をついた所ですぐに見破られるさ。 ただ近所の方や常連客の皆には私とはあの戦で離れ離れになり新たに添い遂げる相手を見つけたと吹き込んでもらってる。」 「相変わらず抜かりないですねぇ。」 入江は分かってたような口ぶりで箸を進めた。三津は細かい所まで配慮する仕事っぷりに感服していた。 「でもねぇ……宗太郎君は騙せない気がするんだよねぇ……。」 「あー……彼ですか……。」 桂と入江が表情を引きつらせたのを,三津は何で?何で?と目を丸くして不思議がった。 二人は吉田が“変に勘が鋭いあのクソガキ”と言っていたのを思い出していた。
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