2人が本棚に入れています
本棚に追加
前、告白して振られた時、かれに言われた。
『お前さ、他にも良い奴いるだろ。俺よりも優しくて、誠実で、穏やかで、お前を幸せにしてくれそうな奴。俺じゃなくて。何で、よりによって俺なんだ?』
その時、私が答えたのは何だったろう。とにかく必死だったから、よく覚えていないけれど。今確かに言えるのは。
――そんなの、私が知りたい。
君より優しくて、誠実で、穏やかで、格好いい人はいくらでもいると思う。けれど、いつも暴言ばっかで皮肉ばっかで嫌味ばっかで厳しくて、何度も泣かされているのに。
やっぱり好きなんだもの。
好きになってしまったんだもの、仕方ないじゃない。
だから、開き直って私はかれにしがみつく。
みっともなくても、愚かしくても。
何度目か数えきれないほどの、彼の拒絶に落ち込みながら教室に戻る。借りた本が異常に重く感じる。溜め息を落として、とぼとぼと歩いていると熱い掌に肩を叩かれた。
あれ、デジャヴ、と振り返ると、そこには。
「どうした、今にも川に飛び込みそうな顔してるぞ」
先日、私を自殺志願者と間違えた例の彼が心配そうに立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!