プロローグ

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例えば、あなたに大切なひとがいたとする。何があっても傍にいて、例え傷ついたとしても決して逃げない。そのひとが悲しんで傷ついて苦しんでいたら、あなたも悲しみ傷つき苦しみ、時に励まし。そのひとが喜び笑い楽しんでいたら、あなたも喜び笑い楽しむ。そんな、愛しくて、恋しくて、大切なひとがいたとする。  だが、そのひとはあなたを愛してくれはしない。友達としては見ても、あなたを恋人として見ることは絶対にない。あなたのことを大切に思ってくれたとしても、それは恋情ではなく友情ゆえにだ。絶対に、異性としてのあなたを見てくれることはない。  それでも、あなたにとってそのひとが一番大切な存在なのである。  しかし、そんなあなたを愛してくれる人が現れたとする。優しく、誠実で、穏やかで、こんな人と一緒にいれば幸せになれるであろう異性が、あなたを愛するという。あなたはその人が嫌いではない。むしろ好きだろう。好きだし、大切だ。きっと、この人と付き合えば幸せになれる。あなたはそう思った。  でも、あなたには大切なひとがいる。誰より愛しくて、誰より恋しいひとが。けれどそのひととあなたは結ばれることはない。どれだけ、そのひとを想っても。そして、一番ではないけれど、それなりに大切で好きな人が、あなたを好きだと言ってくれている。その人と結ばれれば、きっと幸せになれるだろう。傷つくこともなく、夜の孤独に泣くこともなく、幸せになれるだろう。でも、あなたには――。  もし、こんな状況に陥ったとき、あなたは一体どうするだろうか。  あなたは、結ばれることのない恋を取るか、それとも……?
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