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「こないだねー、川で泳いでたら自殺志願者に間違われたんだー」
「当たり前だ馬鹿。誰でも思うわ、傍迷惑なやつめ」
「ひどっ!」
静かな図書室で、声をひそめて話をする。昼休みの喧騒の中、ここだけ妙に静かで落ち着く。広い図書室の中に、私とかれ以外には男子生徒がひとりいるだけだった。
私はかれが本を読んでいる隣で、取り留めもないことをずっと話していた。かれは気が向いたときだけ、返事をしてくれる。私にはそれだけで十分だった。隣にいるだけで満足だった。へにょり、と顔を緩ませてまた話しかける。それを繰り返していた。
「そういえばね、その人ね、私と同い年だったんだってー」
「…………」
「それでねー、結構格好よかったのー。ふふ、妬く?」
「誰が妬くか阿呆。寝言は寝て言え」
「相変わらず暴言が炸裂しますねー。ちょっとくらい妬いてくれてもいいのにー」
唇を尖らせてすねると、かれは心底面倒くさそうに溜め息を落として、本を閉じた。そして私の目を見る。これでもかというほど、冷たい視線に背筋が凍る。
「俺は、お前を好きになることはない。いい加減諦めたらどうだ?」
「……分かってるもん」
「ならいいけど。振り向かない人を追い続けてもいいことないぞ」
君に言われたくない、とぼそりと呟くと完全にシカトされた。浮かびそうになる涙をこらえる。今さら、分かり切ったことだし何度も言われ続けてる事じゃないか。泣いてたまるか。
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