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「 あの頃は、大変だったね。」 過去を振り返っているのか、若菜はしんみりとした声をしていた。 「俺はね、いじけて家をでて一人暮らしを始めた頃に、 戻りたいって何度も思った。 二人の愛情は確かに受けたから、俺にとっては二人が両親だからって 声を掛ければ良かったって後悔もした… でも、今はもう戻らなくても良いと思う。 俺が…過ごした年月で、きっと二人は、わかってくれると思うし… また振出しに戻って若菜を手放すことは出来ないから…」 独り言のように吐き出すと、若菜はギュッと抱き着いてきて、 涙を流しているようだった。 俺の為に涙を流してくれる彼女に出会えた良かったと思う。 「ありがと…」 涙声の若菜に、俺の方がありがとうと言いたいと思う。 「こっちこそ、ありがとう。これからもよろしくな。」 若菜の顔を見つめてそっと涙の跡を拭う。
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