そう、溺れちゃったんです。

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「くっ……」  俺はファル。 この世界の神だ。 「ふはははっ! これでやっと私の時代が訪れるぞぉっ」  それで今高笑いした気持ち悪い顔の奴がゴルディアアス。 この世界の魔王だな。 「しまった……」 「ふふ、これさえなければお前も二度と動けないだろう」  そう、俺は今窮地に立たされている。 魔界の人間が神界にへと介入してきたんだ。 本当はこんなことは許されない。 一億三千九百四十二年前の平和協定により、両者の領土に入ることは硬く禁じられている筈なんだが、ゴルディアスの馬鹿が協定を破った。 そんな事をしたら世界の均衡が崩れ、その災害が自分に跳ね返ってくるということが解らないのかあの馬鹿っ。 『あれ』さえあればあいつを叩きのめせるのに……っ。 「お前が欲しいのはこれなんだろう? ほらほら」 「ちっ、返せよそれ……」 「誰が返すか馬鹿」 ゴルディアスが持っているのは俺の愛用の得物。 それさえあれば、俺はこの世の誰にも負けない。 その名は『ストリレンス』。 自分で言うのもなんだが、装飾が美しく世界の調和を齎す俺が最も愛している剣だ。 油断していたな…… 俺が管理している神界の兵は全滅、それに対して魔界の兵はまだ半分以上も残っている。 援軍も来そうに無い。 「どうせ生きているのはお前だけじゃないか、降伏でもしたらどうだ?」 「そんなことする訳ねぇだろ」 俺は歯軋りをしながら言う。 辺りに充満する仲間の血の臭い。 そして俺以外は……皆事切れているだろう。
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