始まり

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 吐いた息が白くなる、寒くてちょっと憂鬱になる冬の夜。ある目的で訪れたマンションの屋上で私は、とある人と出会った。……少し変わった、白衣を着た知的な女性に。  女性は地面に腰掛け、缶ビールを左手に月を見ていた。冬だというのに月見だなんて。しかも、居るところがあまり良くない場所だ。  ここにいる目的は月見なのだろうが、何故に落下防止用の柵の外側に座っているのか。しかも端っこに。  ……なんて危ない所にいるのか。幸い今日はあまり風が強くないけど、下手したら風に飛ばされてしまうかもしれないというのに。  私としてはそんなど根性を持っている女性の顔を拝みたいところだが、生憎と女性はこちらに背中を向けている。あまり強くない風に白衣の裾がヒラヒラと踊るのしか分からないのだ。  本来ならば無視したいところだが、私の目的は人がいてはやり遂げられないのだ。先客を追い出すのはあまり褒められたことじゃないけれど、それでもやらなくちゃいけない。  私は成し遂げなくてはいけないのだ。鬱憤を晴らすために屋上から地上に向かって大声で叫ぶという、大切なことを。  ……端から見たら滑稽なことこの上ないので、出来れば見学者はいないほうが嬉しかったりする。  見ず知らずの人に声をかけるのは躊躇われたが、覚悟は決めなければ。 「……すぅ、はぁ……」  深呼吸を一つ。吐いて、吸って、吐く。……これで大丈夫。  ちょっと警戒しつつ、私は女性の元へ歩きだすのだった。

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