エウリックの立身記

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エウリックはエルマルク970年ラバン州の東端の小さな港町カミラに住む、漁師の父ハルク=ロバートと海女の母マリー=ロバートの間に生まれた、唯一の子である。 家庭は決して豊かではなかったが、極端に貧しいわけでもなかった。 漁師であり、豪快な父の下で育ったエウリックはその影響を受けてか、やんちゃな少年期を過ごしていた。 そしてエウリック少年は今日もいつものように、父の手伝いをするわけでもなく、近所の畑から器用に奪い取った果物を頬張りながらダラダラと道を歩いていた。 「はあ、今日も暑いなあ、ここカミラは一年中夏みたいなもんだから、ほんと嫌になるな」 カミラはサルマン帝国領の中でも、随一の熱帯、ここに季節という概念はあまりなく、一年中夏のような気候が続いている。それゆえ作れる作物も限られており、なかでも果物は極端に種類が少ないのだ。 「しかし暇だな、こう同じ味の果物を奪って食べ歩くのも飽きてきた」 そうエウリックが自堕落な独り言をつぶやいていると道の先からある男が声をかけてきた。 「おお!エウリックじゃないか!久しぶりだな」 「んっ?誰だっけ…」 「おいおい酷いなあ、俺だよ、ルーマンだよ」 「ルーマン?ああ!何年か前に一緒に悪戯してた」 「うんうん」 「船大工の息子の…」 「それはベルタだろ!!俺は以前お前の隣の家に住んでた漁師のリシーの息子だ。」 「ああ!死んだリシーおじさんの子のルーマンか、なんか変な格好してるし、葬式以来全く見かけなかったからすっかり忘れてた、お前どこいってたんだよ」 「ああ、唯一の家族だった親父が死んで、身寄りが無くなってな、他に選択肢もなかったから都ヤルダンのおじさんとこ行ってたんだ。」 「ふーんそんな事情があったのか…それでその格好はなんなんだ?」 「ああ、これか?格好いいだろう、俺州兵になったんだ」 「なっ…なんだって…」 「都のおじさんとこいったけどそのおじさんが無職で一文無しだったんで、働かなきゃと思い、楽になれる州兵になったんだよ。」 「そっ、そうか…まあ深い話は俺ん家でどうだ?色々話したい事あるし」 「ああ…いいけど」 「じゃあ決まりだな」 そう二人はエウリックの家に足を運んだ
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