1・迷子の幽霊

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「・・・・」 『まぁそんな反応だよね…』 こういう時は先生方に報告するか目的を聞くのが先決なのだろうが このとき一瞬彼の見せたどこかさびしそうな表情が口から違う言葉を発した 「お前、ずっとここにいるのか?」 その言葉に彼は目を見開いて予想とは違う問いかけに驚いているようだった そうして彼はまた表情を戻し 『うん、でもここに来たのは最近』 「最近?」 『そう、ちょっとある子がここに入学してね』 彼はおかしいでしょ?と伊織に言うと、学園を見つめていた 「おかしくないと、思う…でもなんでだ?」 『僕さ、迷子なんだ』 彼は空を見つめて、手を空にかざして風に合わせて手を振っていた 『まぁ、君から見たら僕は、成仏のできない未練のある幽霊ってことだね』 そうやって笑いかけてくる彼を、伊織は小さい子供が無茶をして笑っているように見えていた 「おまえ…今一人なのか?」 会話がむちゃくちゃになっているがこのとき伊織は一番これが聞きたかった もしあの感覚の一つが彼の 『ここ十年は一人だよ』 寂しいという心の声だとしたら 「幽霊だからか?」 『そうだね、誰も僕は見えないから』
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