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「アラン新監督! あなたの監督経験は?」
「昨年からプレストンのユースコーチをしています。引退後、指導者養成コースに通い、無事に修了しています。もちろん、監督のライセンスは取得していますわ。それに、現在世界で最も有能な監督の一人であるモウリーニョ監督も、監督経験がないところからキャリアをはじめています。けれども、彼がポルトとチェルシー、そしてインテルでやったことについては、ここにいらっしゃる方なら誰もがご存じのはずよね」
アランは記者たちから目を離さず、そう一息に言い放った。
いまをときめくモウリーニョの名前を引き合いに出すとは、なかなかにできることじゃない。
ボビー・ロブソンの通訳やファン・ハールのアシスタントコーチとしてバルセロナでキャリアを高めたジョゼ・モウリーニョは、選手としてはとても一流とは言えなかった。
けれども、彼は母国ポルトガルに戻ると弱小クラブであるウニオン・レイリアの監督として快進撃を続け、ポルトガルの名門クラブであるポルトに引き抜かれると、クラブにUEFA CUPやチャンピオンズ・リーグでの優勝をもたらした。
それはこの会見場にいるフットボール記者であれば誰でも知っていることだった。
ここイングランドでも、チェルシーの監督としてプレミアを連覇し、インテルを率いセリエAでも優勝した。
アランの言い分に、ビッグ・マウスだと、何人かの記者たちは苦笑していた。
「……いずれにしても、数試合後の結果を見てください。どこまでできるのかを、ぜひ見ていただきたいと思いますわ」
面長の顔に、耳にかかるやや長い金髪のアランは、室内をもう一度ゆっくりと見回した。
顔をあげて、自分のことをよく覚えておくようにと意識づけるかのように。
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