第1節 記者会見

13/14
7460人が本棚に入れています
本棚に追加
/2220ページ
 試合中、アランは選手たちの動きを、ピッチの使い方を、ボールがないところでの動きを、真剣なまなざしで見つめていた。  実際の試合の中では、真剣な練習を何度も繰り返した以上のものが見えるものだ。  0-2というスコア以上に、試合内容が問題だった。  そのことに選手たちがどれだけ落胆し、自らのふがいなさを感じているか。  その実力不足についてどのようにしたいと考えているのか。  強い思いを持っているのか。  アランはそれを真摯に見極めようとしていた。  仮にも彼らはプロフットボール選手なのだ。ただフットボールを楽しんでいるだけでいいわけがない。  監督に就任して数日の間、アランはできるだけ多くのことを見ていた。  時間はない。けれども、監督が変わっただけで劇的に成績が改善するはずもない。  アランはそのことをよくわかっていた。  物事には原因と結果がある。勝つためには、勝つための要素をひとつずつ積み重ねていくしかないのだ。 (けれども、やはり時間がないわね)  アランはそう思う。 (しばらくは、ギリギリのところでのやりくりと、少しばかりの運が必要だわ――)  彼が監督することになったチームには悔しさをにじませる者と、そうではない者たちに二分されていた。  アランは黙ったまま選手たちを見つめていた。  何人かの選手たちは、アランと目が合うとすぐに目をそらすのだった。
/2220ページ

最初のコメントを投稿しよう!