7459人が本棚に入れています
本棚に追加
/2220ページ
「ね、ね。これって何かな? 次の対戦相手のビデオ?」
左サイドバックのパーカーが無邪気な声を出してそう訊ねる。
まだ19歳と若く、今期から加入した選手だ。陽気な性格で、北部の街であるプレストンに来て、寒さに強いことをいつも誇らしげに自慢している。
それまでフットボールであまり挫折することなくプロにまでなったためか、どこか人を喰ったようなところがある。
「知らねえよ。すぐに始まんだから待っていればいいんだよ」
同じくDFのモイーズが吐き捨てるように言う。
彼は自分からポジションを奪ったパーカーのことをあまりよくは思っていなかった。
確かに俊足で攻撃参加に優れているのは認めるが、攻撃に意識が向かいすぎ、肝心のディフェンスがまだ甘いと事あるごとに指摘している。
先日の試合でも、パーカーが攻撃参加して空いたスペースを突かれ、先制点を決められた。
もし俺だったら、あんなへまはしない。強がりのようで口には出さなかったが、そんなふうに思っていた。
「モイーズはいつも怖いね、まったくさ」
パーカーはそんなモイーズの思いに気づかないのか、おどけてそんなふうに言う。
最初のコメントを投稿しよう!