第4節 ミーティング

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 多くの選手は後ろ側から席に着いていく。  そんな中で、部屋に入ってきてまっすぐに一番前の中央に座った選手はアンディ・キャロルだ。  マンチェスターユナイテッドのリザーブチームから、シーズン終了までのレンタル移籍で加入したウイングハーフである。  まだ20歳と若く、パーカーとともにチーム一の快足だ。  名門チームは層が厚く、若手がレギュラーメンバーに名を連ねることはかなり難しい。  そのため若手に実戦経験を積ませるため下部リーグのチームにレンタルに出すことが頻繁に行われていた。  下部チームにとっても、才能ある選手を低額で受け入れることができることは、いわゆるウィン―ウィンの関係でお互いの利害関係が一致するのである。  けれども、キャロルの獲得はサポーターたちの間では、今シーズンの失敗の元凶の一つであると言われていた。  個人プレーに走りすぎるのだ。  もちろん、能力的にはマンUに所属しているくらいなのだからすぐれたものがあったが、功を焦りすぎるからなのか、ボールを持ちすぎた。  その結果チャンスの芽を潰すことが多く、周囲ともうまくかみ合っていなかったのである。  性格的にも、尊大なところがあった。マンUの選手である自分は、プレストンの他の選手たちと違ってエリートなのだという意識が見え隠れしていた。  プレストン生え抜きのベテラン選手たちはそれを面白く思っていなかった。  一言でいえばキャロルはチーム内で浮いていたのである。  一番前の席に座ったのも、新しい監督に自分をアピールしようということに加え、一緒に行動する相手がいないからでもあった。
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