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次に、スミスが一人で入ってきて、ハリーの隣に座る。
ハリーの隣に座ると、スミスの背の低さがより強調される。
スミス・ガードナーは今年33歳になるベテランセンターバックで、身長が167cmしかない。
チャンピオンシップで、もっとも身長が低いセンターバックのレギュラーと言えるかもしれなかった。
「キーガン、怪我はどうだ?」
スミスは背は低いが、激しい北風を体に受け続けてきた漁師のように引きしまったたくましい体をしている。
右目の斜め上に稲妻のような傷跡が残っており、サポーターたちには、大鯨と戦ったときについた傷だなどと冗談半分で言われたりしている。
口数はあまり多い方ではない。けれども、よくチーム全体を見て、的確な気遣いを行っている。
「ええ、大丈夫です。今日もリハビリに励みましたよ」
「それはよかった。ただ、あまり無理するんじゃねえぞ。冷え込む日が続いているから、なおさらだ」
「監督にも同じことを言われましたよ」
「アランにねえ」
プレストン一筋十五年のスミスは、現役時代のアランと一緒にプレイをしていたことがある唯一の選手でもある。
スミスが一緒にプレイした選手の中で、アランほど頼りになるものはいなかった。おネエ言葉を使う話題性の方が先に立っていたが、アランのプレイは際立っていた。
チームがピンチの時にも、アランにボールが渡ると何とかなるんじゃないかと思った。
そして実際、アランは何度もチームのピンチを救ってきた。
そのアランが今度は監督としてプレストンを率いる。
アランなら何とかしてくれると、口にこそ出さなかったが、スミスは誰よりも思っていたのかもしれない。
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