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十八時を五分ほど過ぎて、最後にエヴァンスグループが入ってきた。
当たり前のように空いている中央付近の席に座る。
エヴァンス・ウィルソン。
プレストンの中心選手であり、長めの金髪をオールバックにしたハンサムな姿は、新進気鋭の若手俳優のようにも見える。
彼は中央にどんと座り、その周囲を彼の取り巻きとも言える選手たちが王の護衛をするかのように座っていく。
右サイドハーフのコーエンや、ケガで試合に出られないキーガンの代わりにボランチを務めているジョンソン、センターバックのマイケル、それにリザーブチームの何人かだ。
チームの王様でもあるエヴァンスは、不敵な表情を浮かべながら、席に腰を下ろす。
「遅刻だぞ、エヴァンス」
キーガンが後ろから声をかける。
エヴァンスは振り向くと、「すんません。キャプテン」と悪びれた様子もなく言う。
「でも監督もまだ来ていないですよ」
「屁理屈を言うな」
エヴァンスはチームの中心だったが、そのためか好き放題なところがあった。
時間にルーズなこともそうだし、練習に関しても気分の乗らない時には手を抜いているようなところがあった。
けれども、欠かすことのできない中心選手であるが故に、アンタッチャブルな存在でもあったのだ。
少なくとも、前任監督は腫れものを触るかのようにエヴァンスに接し、エヴァンスも特別扱いを当然と思っているような節があった。
一触即発の雰囲気に、周囲に緊張感が走る。
気が弱いハリーは、その巨体に似合わずおろおろとエヴァンスとキーガンを見比べる。
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