第4節 ミーティング

10/14
前へ
/2220ページ
次へ
「今日は、『プレストン・アワー』特別編をお送りします。今シーズンの、前半戦を振り返っていきます」  映像に、撫子の声が重なる。  目の前の撫子はアランと一緒に横の席に腰をおろしているので、事前に録音したものだということがわかる。  それから流れた映像は、選手たちにとっては非常に居心地の悪くなるものだった。  最初に、昨シーズン最後の試合――昇格プレーオフの映像が映し出される。  惜しくも後一歩のところで涙を呑んだその映像は、今見てもなかなかに感動的なものだった。  奮闘した選手たちに鳴りやまない拍手を送るサポーターたちと、試合後のスタジアムやパブなどで収録された、今シーズンはとてもよく頑張った、最高だったというサポーターたちの発言。  あまりに感動してチーム名を連呼しながら泣いているサポーターの姿が映し出されている。  そして、今年こそはプレミア昇格へ――と臨んだ新シーズンへと映像が切り替わる。  第1節の敗戦の様子が映し出される。  安易なパスをカットされ、カウンターから1点を決められる映像。  コーナーキック時のマークが曖昧で、最もフリーにしてはならない選手に簡単にヘディングを決められる映像。  ぎこちなく連携がぎくしゃくし、うつむいている選手たちの映像が続く。  そして第2節、敵のエースにハットトリックを決められる映像に、ハリーがヘディングを明後日の方向へ飛ばす映像が続く。  後ろの席でハリーが申し訳なさそうにうつむく。  第3節はエヴァンスの活躍もあり初勝利を挙げるが、後半にキーガンが現在まで続く負傷をしてしまう。  それからは勝ったり引き分けたり負けたりと、安定しない成績で進む。  そして十月からは、引き分けを挟んでの泥沼の8連敗――画面には最新の順位表が1位から移し出され、最後の方になり22位のプレストンの名前が現れる。  24チームで構成されているチャンピオンシップの中では、下から3番目のひどい順位だ。  再びスタジアムやパブでのサポーターたちの映像が映し出されるが、最初とは異なり、そこで聞こえてくるのは選手やフロントへの非難のメッセージばかりだ。  サポーターたちの生の映像は、選手たちにとっては胸の痛くなるものだった。
/2220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7463人が本棚に入れています
本棚に追加