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「明日は結構な人数の参加者がいるようよ。フィジカルやテクニックで水準以上の応募者と、あなたたちが試合をして、どんな結果になるのか興味深いわ。十五時から試合をするから、十四時にはクラブハウスの練習グラウンドに集合ね。もちろん、遅刻厳禁よ」
アランはそう言うと、チームのメンバーたちを見る。
憮然とする者、不思議そうな表情をしている者、毒づく者、様々な反応を示す選手たちがいる。
それから、アランは撫子を伴ってミーティングルームを出ていった。
撫子は部屋を出る際に、選手たちに軽く会釈をして、それからアランの後についていく。
ミーティングルームには、選手たちだけが残された。
「なんだよいまの映像。露骨な嫌がらせかよ」
選手の一人が声に出して言う。
「監督の言うように事実だろうよ。少なくとも、お前はCGじゃなかったぜ」
「お前の弱気なバックパスもな」
「なんだとぉ!」
からかわれた選手がからかった選手に掴みかかろうとする。
パイプ椅子が倒れ、大きな音が響き渡る。
エヴァンスは興味もなさそうに一人立ち上がるとゆっくりと部屋を出ていく。
スミスが「おい、やめろ」と二人の間に割って入る。
他の選手たちも二人をひきはがしにかかるが、それを振り払って殴りかかろうとする。
「いい加減にしろ!」
キャプテンのキーガンが一喝して、ようやく静かになる。
一触即発の雰囲気の中、選手たちの激しい息遣いだけが部屋の中に響く。
それから、エヴァンスグループの何人かの選手たちが、すでにいなくなっていたエヴァンスに続いて部屋を出て行った。
掴みかかった選手も、パイプ椅子をなぎ倒しながら部屋を出ていく。
部屋の中に残った何人かの選手たちは、気まずそうに倒れた椅子を元の位置に戻す。
ハリーはおろおろしながら、部屋の中を見回す。
サッカーはチームスポーツだと多くの人が言う。だとしたら、チームワークが何よりも重要なのだろう。
けれども、この部屋の中では、そのようなものは蒸発し霧散してしまっているかのようだった。
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