ライジング・サン

第1節 記者会見

「チームビルディングの全権ということは、冬の移籍マーケットが開いている今月末までに数人の選手を獲得し、このひどい状況からの脱却を考えているということでしょうか？　中心選手であるエヴァンスが不振のチームからの移籍を考えているとの噂もありますが」

　再び記者の一人が手を挙げると同時に口を開く。

　この街の記者たちは、どこか前のめりだ。英国北部に位置し、長く冷たい冬に覆われるプレストンでは、フットボールがリーズナブルな暖房のような効果を有している。

　だから皆、フットボールのことになると一家言あるにわか評論家やにわか監督となる。

　そういった意味では、住人たちとクラブの間が親密な関係にある、欧州にいくらでもある街のひとつということができた。

「もちろん、と言いたいところですが、なかなかそうもいきません。わが偉大なるデレク会長は、冬の移籍マーケットでの新たな選手の獲得は断念するようにとおっしゃっています。皆さまもご存じかもしれませんが、プレストンは、かたくとじられた蛇口のように、しっかりとした緊縮財政をとっていることでも有名です」

　アランのウィットに富んだ回答に会場が笑いに包まれる。

　その一方で、「移籍もなしでどうやって立て直すんだよ」と毒づく声も聞こえてくる。