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薄汚いギターケースを抱え、育った街をあとにした。
駅前は酒に酔いつぶれている大人で溢れかえっていた。
俺は、そんな人たちの仲間入りをするのが嫌だった。
だからこそ夢を持ち、希望を持ち上京を決意した。
誰にも相手にされなかった自分が音楽と出会い、そして仲間が出来た。
自分の思っている事を素直に表現出来る素晴らしさにすっかり魅了されてしまった。
腐りきった街の中でもギターの音色だけは輝いていた。
「必ずプロになってやる…。」
容易い事ではないが今さら引き返す訳にはいかなかった。
徹夜して学んだ音楽理論も、血を流しながらかき鳴らしたギターも無駄にはしたくない。
この未曽有の大不況にアーティストになるなど考えられないかもしれない。
人は金が無くなると嘆き、金のために働きマニュアル通りの言葉で客を迎える。
俺は、人間のそう言う意地汚い所が大嫌いだ。
こんな世界だからこそ伝えなければならない言葉や音がある。
金なんか最低限暮らせるだけあれば充分だ。
誰になんと言われようが、この世界から社会風刺という言葉が消えるくらい綺麗な世の中になるまで俺はロックをやり続けてやる。
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