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黒のハートのコインケース…。中にはお金じゃなくて、鍵が入っている。
「もう、返さないでよ?」
「うん!」
「それと、これも貰ってほしいんだけど?」
そう言って、茶色の小さな箱を手渡した。
箱には有名ブランドの名前が入っていた。
あたしは去年そこの財布をなけなしのボーナスで買って持っている。
「え?これ…」
「1日遅れたけど、誕生日おめでとう」
「知ってたの!?何で知ってんの!?」
「…覚えてないだろうけど、最初一緒に飲んだ時に聞いたんだよね。凜が1日遅れだけどっつって俺の誕生日祝いしてくれたから」
「…何したの?」
そんな事すら記憶にない。
「乾杯して音程狂った歌、歌ってくれた」
「…そう」
音程狂った…は余計だな。あたしが小さくため息をついてると、可笑しいのかクスッと笑っていた。
「でもね、嬉しかったから、君の誕生日は必ずお返しに俺が祝うからって理由つけて、半ば強引に日にち聞いたんだよ。…それなのに1日遅れてごめんね…」
強引にって事は携帯の番号交換の時の様に、またあたしは嫌がってたんだろうか?酔った時の話はもう聞きたくないなぁ…。
「ううん。全然いいよ。昨日、忙しかったんでしょ?」
「いや、全然…」
「はいぃ?孝太君には忙しいって言って誘い断ったんじゃないの?」
「…そうだよ。何で知ってんの?」
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