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――――――― 翌日、仕事の時以上にビシッとスーツでキメた向井さんと一緒に、私の家に言った。 「何でスーツなの?普通の格好でいいじゃない?」 「アカンって!こういう時はちゃんとせな!」 おまけに、ご丁寧にうちの両親の好きな和菓子屋で、大好物の豆大福を手土産として買っちゃってる…。 もの凄い心構えだなぁ…何する気だろ? よくわからないまま家に帰ると、お母さんもビックリしていた。 「まぁ、朝じゃなくて昼帰りで…って、カズ君、一体どうしたの?その格好? 今日土曜日でしょ?仕事?」 いつもなら『そんなん言わんといてや、オバチャン』と笑って言いそうな向井さんが 「ちゃ、ちゃいます…ちょっとお話がありまして…あ、あのコレどうぞ!」 と、凄く緊張しながら手土産を渡していた。 「ありがとう!…よくわからないけど、まぁ、中に入って?」 言われるがまま家に入った向井さんは、お母さんに「で、話って何?」と訊かれるまで、ずっと黙っていた。 「今日は大事なお話があって来ました。突然ですみません」 標準語だ!!関西弁じゃない! いつもとは違う向井さんに、両親や弟までもが緊張していた。 でも、私は緊張よりビックリしてしまって、思わず 「ふ、普通に喋れるんだねぇ…」と言ってしまった。 すると、一瞬キッと私を睨んだけど、また両親の方を向いた。 ちょっと、怖かった…。 そう思いながら、今度は余計な事は言うまいと反省して、私も彼を見た。
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