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「お前はどうなんだよ? 会いたいとか思わねえの?」 「俺んとこはもう無理だって。死んじゃってるんだから」 「もし会えるんならって話だよ」 「俺はもういいよ」伸二は自分でも驚くぐらい即答した。「四人で住んでる時が一番しんどかった。兄貴と二人の方が楽しいよ」 「あの全然似てない兄貴か。兄弟でよくあれだけ似てないよな。母親違いだっけ?」  伸二は一瞬ためらったが前田相手なら言ってもいいと思った。「いや、両方違う。兄貴は連れ子の連れ子。親父の前の奥さんの連れ子だったんだ」 「えっ。それなのにお前の親父が引き取ったの?」前田は驚きの表情を見せる。 「俺もその辺の事情はあんまり詳しくないけど、前の奥さんにも色々あるんじゃない? 結局不倫で捨てられたわけだしさ」 「ふうん。お前も色々あるんだな」 「そういうこと」そう言って伸二は立ち上がった。「そろそろ戻るか」  前田も頷いて立ち上がり、吸い殻を処分し残りのたばことライターは元の缶箱に戻した。そして、たばこのにおいを消すためにお互いの制服に消臭剤を振りかけた。  体育倉庫から出て鍵をかけた時、前田が小さい声で呟いた。「俺、やっぱり会いたいかも。会ってありがとうって言いたい。なんだかんだ言っても、ここまで俺のこと見捨てずに育ててくれたわけだからさ」  そういうものなのかなと伸二は思ったが、聞こえなかったふりをしてそのままそこで別れた。
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